座敷童子
岩手の旧家に住むという子どもの姿の家の神。いる家は栄え、去ると家運が傾く。

- 分類
- 家の精霊・福の神
- 出没
- 旧家の座敷・蔵
- 分布
- 岩手県を中心に東北
- 主な記録
- 『遠野物語』(1910)第17・18話
解説Overview
座敷童子は、岩手県を中心とする東北の旧家に住むと伝えられる、子どもの姿をした家の精霊である。呼び名には「ザシキボッコ」「クラワラシ」「クラボッコ」「ウスツキコ」などがあり、住む場所によって座敷、蔵、臼のそばと語り分けられる。おかっぱ頭の五、六歳ほどの童で、赤い顔とも、着物姿とも語られ、姿を見た者はまれで、多くは足音や気配、枕を返すいたずらとして感じ取られる。
最も広く読まれた記録は柳田國男『遠野物語』(1910)である。第17話は、土淵村山口の旧家・山口孫左衛門の家に二人の童女の座敷童子がいたが、ある日二人が村を去るのを見た者があり、その後まもなく一家は茸の毒で滅んだ、と語る。第18話にも旧家に座敷童子が出る話が続く。『遠野物語』は座敷童子を「この神の宿りたまふ家は富貴自在なりといふことなり」と説明し、家の盛衰を左右する存在として位置づけた。
遠野の民話を柳田に語った佐々木喜善は、のちに『奥州のザシキワラシの話』(1920)をまとめ、東北各地の事例を集めている。そこでは座敷童子が家に居着く理由として、間引かれた子の霊、家の守り神、あるいは河童が家に上がったものなど複数の解釈が示されており、単一の起源には帰せない。子どもと遊ぶが大人には見えない、客が来ると先に座敷にいる、などの語りは、旧家の家格や不可視の存在への畏れを反映している。
現代では岩手県二戸市金田一温泉の旅館「緑風荘」が、座敷童子「亀麿」の出る宿として知られ、宿泊予約が数年待ちになるほどの人気を集めた。座敷童子は妖怪のなかでも例外的に「会いたい」と望まれる存在で、幸運をもたらす家の神という性格が今も生きている。
伝承・史料Lore
山口孫左衛門の家:『遠野物語』第17話。二人の童女が去った後、一家二十数人が茸の毒で一日のうちに死んだ。
緑風荘の亀麿:金田一温泉の旅館に出るとされる座敷童子。「槐(えんじゅ)の間」で見たという体験談が多い。
枕返し:寝ている人の枕をひっくり返す、足音を立てる、といった無害ないたずらが典型。
出典・参考文献References
- 『遠野物語』 柳田國男 1910 — 第17話・第18話
- 『奥州のザシキワラシの話』 佐々木喜善(玄文社) 1920
- 『日本妖怪大事典』 村上健司(角川書店) 2005 — 「座敷童子」「クラワラシ」
- 『怪異・妖怪伝承データベース』 国際日本文化研究センター — 「ザシキワラシ」項(2026-09-18)
特集Collections
よくある質問FAQ
座敷童子に会うとどうなる?
伝承では、座敷童子がいる家は栄えるとされ、見た人には幸運が訪れると語られます。害をなす話はほとんどありません。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室