河童
川や沼に棲む子どもほどの水の怪。頭の皿、相撲好き、キュウリ、尻子玉で知られる日本一有名な水妖。

- 分類
- 水の怪
- 出没
- 川・沼・淵
- 分布
- 全国(呼称は地域で異なる)
- 弱点
- 頭の皿が乾くこと
- 主な初期記録
- 『和漢三才図会』(1712)
解説Overview
河童は、川・沼・淵に棲むとされる水の怪で、日本でもっとも広く知られた妖怪のひとつである。呼び名は土地ごとに違い、九州では「ガワッパ」「ヒョウスベ」、四国・中国地方では「エンコウ」、東北では「メドチ」、関西では「ガタロ」などと呼ばれた。江戸時代の百科事典『和漢三才図会』(1712)は「川太郎」の項でこれを取り上げ、体は子どものようで、顔は虎に似て嘴があり、体は青黄色で頭に凹みがあると記す。
姿の描写は時代と地域で揺れるが、共通するのは「頭の皿」と「水を離れると力を失う」という弱点である。皿が乾くと動けなくなる、腕を引き抜かれると相撲に負ける、といった話が各地に残る。一方で河童は必ずしも凶悪ではない。相撲を挑んで負けると人に従い、田の水を守り、腕を返してもらう代わりに接骨薬の製法を伝えた、という「河童の妙薬」伝承は九州から東北まで分布する。馬を川に引き込もうとして失敗し、逆に捕らえられる「河童駒引」の話も同じ系譜に属する。
怖ろしい面としては、水に入った人の肛門から「尻子玉」を抜いて溺死させる、という語りが広く知られる。水難事故を説明するために河童が持ち出された側面は大きく、子どもに川で遊ぶ危険を教える役割を果たしてきたと考えられている。柳田國男『遠野物語』(1910)には、遠野の河童は顔が赤く、川べりの家に河童の子を産ませる話(第55〜59話)が採録され、常堅寺裏の「カッパ淵」は今も観光地となっている。
近代以降、河童は絵本や漫画、企業マスコットにまで広がり、緑色の肌・くちばし・背中の甲羅という現在の定型像は、鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776)の図像と昭和期の児童文化が重なって固まったものである。
伝承・史料Lore
河童の妙薬:腕を切り落とされた河童が、返してもらう条件として傷薬や接骨薬の作り方を教えたという話。実際に「河童の薬」を家伝とする旧家が各地にある。
相撲:河童は相撲を好み、人に勝負を挑む。負けると尻子玉を抜かれるが、先に仏に供えた飯を食べておくと河童は近づけないという。
遠野のカッパ淵:『遠野物語』第58話に「川には河童多く住めり」とあり、常堅寺裏の小川がその場所とされる。地元の河童は赤いという。
出典・参考文献References
- 『和漢三才図会』 寺島良安 1712 — 巻40「川太郎」
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776 — 前篇 陰「河童」
- 『遠野物語』 柳田國男 1910 — 第55〜59話
- 『日本妖怪大事典』 村上健司(角川書店) 2005 — 「河童」「河童の妙薬」「河童駒引」
- 『怪異・妖怪伝承データベース』 国際日本文化研究センター — 「河童」項の各地事例(2026-09-18)
特集Collections
よくある質問FAQ
河童はなぜキュウリが好きなの?
水神への初物供えにキュウリが多く用いられ、河童が水神の零落した姿と考えられたため、供物のキュウリが河童の好物として語られるようになったとする説が有力です。
河童の「尻子玉」とは?
人の肛門にあると想像された玉で、河童に抜かれると死ぬとされました。溺死者の肛門が開くことから生まれた説明と考えられています。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室