ろくろ首
夜、首が長く伸びる、あるいは首が胴を離れて飛ぶ女の怪。見世物と怪談で江戸に広まった。

- 分類
- 人の変化・怪異
- 系統
- 抜け首(飛頭蛮)/伸びる首
- 主な初期記録
- 『曾呂利物語』(1663)
解説Overview
ろくろ首は、夜になると首が長く伸びる女の怪として知られるが、伝承には二つの系統がある。ひとつは首が体から離れて飛び回る「抜け首」で、中国の『捜神記』に見える「飛頭蛮(ひとうばん)」に由来し、頭が夜間に胴を離れて虫や人の生気を食い、明け方に戻るとされた。もうひとつが、首が糸のように長く伸びて障子の隙間や行灯を覗く、現在よく知られる「伸びる首」である。
江戸初期の怪談集『曾呂利物語』(1663)には、女の寝ている間に首だけが抜け出て外をさまよい、鶏の姿にも見えたという話があり、これは抜け首の系統に属する。鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776)は「飛頭蛮」に「ろくろくび」と振り仮名をあて、寝ている女の体から首が抜けて宙を飛ぶ図を描いた。つまり石燕の時点では、ろくろ首とは首が抜けて飛ぶ怪だった。
「首が伸びる」像が広まったのは、江戸後期の見世物と絵草紙による。細工物やからくりで首の伸びる女を演じる見世物が人気を集め、黄表紙や幽霊画で、行灯の油をなめるために首を伸ばす女の図が定型化した。首が伸びるのは女の業や前世の因果、または首の骨のゆるみという奇病とも語られ、当人は寝ている間に首が伸びることを知らない、という設定が多い。
小泉八雲『怪談』(1904)所収の「ろくろ首」は、旅の僧・回竜が山中の家で首の抜けた者たちに襲われ、頭を打ち倒して退散させる話で、抜け首の系統を英語圏に伝えた。今日の漫画やアニメでは伸びる首の像がほぼ独占的だが、二つの系統が「ろくろ首」の名のもとに重なっていることを知っておくと、江戸の絵をより正確に読める。
伝承・史料Lore
行灯の油:首を伸ばして行灯の油をなめる図は幽霊画の定型。
回竜和尚:八雲「ろくろ首」の主人公。抜け首の一味を退け、その首を土産に持ち歩く。
見世物:江戸後期、首の伸びる女を演じる細工見世物が両国などで興行された。
出典・参考文献References
- 『曾呂利物語』 1663 — 巻1「女の首抜け出て飛ぶ事」
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776 — 前篇 風「飛頭蛮(ろくろくび)」
- 『Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things』 Lafcadio Hearn(小泉八雲)(Houghton Mifflin) 1904 — "Rokuro-Kubi"
- 『日本妖怪大事典』 村上健司(角川書店) 2005 — 「ろくろ首」「飛頭蛮」
特集Collections
よくある質問FAQ
ろくろ首は首が伸びるの、抜けるの?
どちらも「ろくろ首」と呼ばれてきました。江戸前期の記録と石燕の絵は「抜けて飛ぶ」型で、「伸びる」型は江戸後期の見世物と絵草紙で広まったものです。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室