雪女
雪の夜に現れる白衣の女。息で人を凍らせるとも、人に嫁いで子をなすとも語られる雪国の怪。

- 分類
- 雪の怪・異類女房
- 出没
- 吹雪の夜、山道、雪国の村
- 分布
- 東北・北陸・信越ほか
- 主な初期記録
- 『宗祇諸国物語』(1685)
解説Overview
雪女は、雪深い夜に現れる白い着物の女の怪で、東北・北陸・信越を中心に日本各地の雪国に伝わる。「雪女郎」「雪娘」「雪おんば」「ユキンバ」「シッケンケン」(長野)など呼び名は多く、姿も、若く美しい女から、子どもを抱いた母、老女まで幅がある。共通するのは、雪と一体の白さと、人を凍えさせる冷たさである。
文献上の早い記録として、連歌師宗祇の見聞を集めたとされる『宗祇諸国物語』(1685)に、越後の宿で雪の朝に見た、白い着物の身の丈一丈ほどの女の話が載る。鳥山石燕は『画図百鬼夜行』(1776)に雪女を描き、江戸の読者に雪国の怪として広めた。柳田國男『遠野物語』(1910)第103話には、小正月の夜に雪女が多くの童子を連れて出るので子どもは早く帰される、という遠野の習俗が記されている。
語りの型は大きく二つある。ひとつは、吹雪の夜に旅人や炭焼きの前に現れ、息を吹きかけて凍死させる、あるいは赤子を抱かせて動けなくする、という恐怖の型。もうひとつは、雪女が人間の男のもとに嫁いで子を産み、正体を知られるか、約束を破られると去っていく、という異類婚姻の型で、「雪女房」「雪の妻」とも呼ばれる。
後者を世界に広めたのが小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』(1904)所収「雪女」である。若い木こり巳之吉は吹雪の夜、老いた茂作を凍らせる白い女を見るが、「今夜のことを話せば命を取る」と言われて助かる。翌年出会った娘お雪と結ばれ十人の子をなすが、ある夜あの晩の話をしてしまい、お雪は正体を明かして消える。八雲は武蔵国調布の農夫から聞いたと序に記しており、明治期の東京近郊にも伝承があったことがわかる。今日の雪女像の多くは、この一篇に負っている。
伝承・史料Lore
遠野の小正月:『遠野物語』第103話。「雪女は多くの童子を引き連れて来る」ため、小正月の夜は早く家に帰る。
八雲の「雪女」:巳之吉とお雪の物語。語らぬ約束を破ると去る、という異類婚姻譚の典型。
赤子を抱かせる雪女:抱いた赤子がだんだん重くなり、雪に埋まって凍死するという型。刀を口にくわえて抱くと助かるとも。
出典・参考文献References
- 『宗祇諸国物語』 1685 — 巻5 越後の雪女
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776 — 前篇 陰「雪女」
- 『遠野物語』 柳田國男 1910 — 第103話
- 『Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things』 Lafcadio Hearn(小泉八雲)(Houghton Mifflin) 1904 — "Yuki-Onna"
- 『日本妖怪大事典』 村上健司(角川書店) 2005 — 「雪女」「雪女郎」「雪女房」
特集Collections
よくある質問FAQ
雪女は本当に人を殺すの?
凍死させる型の話が多い一方、人に嫁ぐ話や、子どもを連れて歩くだけの話もあります。雪山の遭難を説明する存在として語られた面が大きいと考えられています。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室