提灯お化け

ちょうちんおばけchochin-obake

提灯お化け(ちょうちんおばけ)は、江戸時代の妖怪画や草双紙に描かれた、提灯が化けた付喪神の一種。

イメージ画(当サイト制作)
分類
器物の怪
分布
口承は稀
出没
古びた提灯
弱点・対処
記録なし
主な初期記録
『百器徒然袋』(1784)

8 出典 · 4,062 字 · 最終更新

解説Overview

提灯お化け(ちょうちんおばけ)は提灯の妖怪で、ちょうちん、化け提灯、お化け提灯、提灯小僧とも呼ばれる。古い提灯が上下に割れ、割れ目が口となって長い舌を出し、上半分に一つ目または二つの目がある姿が一般的である。顔・手・体・翼が生える図や、桶型・小田原提灯型の図もある。

江戸時代以後の草双紙、おもちゃ絵、『お化けかるた』に広く描かれ、明治・大正以後は玩具、子供向けの書籍、お化け屋敷にも用いられる。鳥山石燕『百器徒然袋』中巻は不々落々(ぶらぶら)の名で提灯形を描く。葛飾北斎『百物語』の「お岩さん」や歌川国芳『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』は、歌舞伎『東海道四谷怪談』(1825年)の提灯抜けなどに発想した提灯お岩である。土地に即した口承はほとんど残らず、絵画上の妖怪と分類する書籍や、子供向けの創作とする説がある。狐や狸が提灯に化ける話や提灯火とは別である。山形県に、神社の古びた提灯を片付けると現れなくなったという化物寺型の例がある。

名称と語源

提灯お化け(ちょうちんおばけ)は提灯の妖怪を指す呼び名で、「ちょうちん(提灯)」「化け提灯」「お化け提灯」「提灯小僧」などとも呼ばれる。「化け」「お化け」を冠した呼びは器物そのものが変化した系統を示し、「小僧」は童子を示す語で、器物の怪を童子型として立てた呼びである。江戸時代以後の草双紙やおもちゃ絵、かるた(『お化けかるた』など)に広くその姿が描かれている。

鳥山石燕は『百器徒然袋』(1784年)中巻「不々落々」に、不落不落(ぶらぶら)という名称で提灯のかたちの妖怪を描いた。「提灯お化け」ではなく、読み「ぶらぶら」を付した画題であり、不落不落と不々落々は同一画題の表記のゆれである。

葛飾北斎の『百物語』「お岩さん」と歌川国芳の『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』は、提灯お岩(ちょうちんおいわ)と呼ばれる。歌舞伎『東海道四谷怪談』(1825年)における提灯抜けや、『累渕扨其後』(1813年、中村座)で提灯に顔を現す演出から発想された図であり、器物が化ける呼びとは別に、霊が提灯から現れる系統の名である。

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姿かたち

一般的に考えられている姿は、古い提灯が上下に割れ、割れた部分が口となって長い舌が飛び出し、上半分に一つ目あるいは二つの目があるものである。提灯から顔、手、体、翼が生えている図もある。この姿は、江戸時代以後の草双紙やおもちゃ絵、『お化けかるた』に広く描かれている。

江戸時代の絵画には、桶型や小田原提灯型のものも見える。鳥山石燕は『百器徒然袋』に、不落不落(ぶらぶら)の名で提灯のかたちの妖怪を描いた。

葛飾北斎『百物語』の「お岩さん」や歌川国芳『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』は、提灯からお岩が現れる姿を描き、提灯お岩(ちょうちんおいわ)と呼ばれる。鶴屋南北『東海道四谷怪談』(1825年)で伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から姿を現す演出(提灯抜け)と、1813年中村座の『累渕扨其後』で提灯に顔を現す演出から発想された図である。

器物の妖怪を多数描く『百鬼夜行絵巻』のうち、江戸時代以前と見られる古い作例に提灯は確認されていない。江戸時代以後には狩野乗信『百鬼夜行之図』などに提灯が描かれた作例がある。

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性質と弱点

人との関わりとして残るのは、驚かす話が主である。鳥山石燕は『百器徒然袋』に不落不落(ぶらぶら)の名で提灯のかたちの妖怪を描いたが、襲う・恩を返すといった習性はそこにはない。妖怪漫画家・水木しげるの著書には、人を驚かしてその魂を吸い取る話が載る。ただし出典となる一次資料の名は挙げられていない。害をなす話も、一次資料に遡れるものは見当たらない。

山形県の昔話では、古びた提灯のある神社に提灯お化けが現れて人を脅かし、提灯を片付けると現れなくなった。出没の場は古びた提灯であり、正体が提灯であった「化物寺」の類例である。伝承上で提灯と称される怪は、狐や狸が人を驚かすために化ける表現として各地にあり、提灯火のように器物ではなく怪火として伝わることも多い。『お化けかるた』など江戸以後のかるたにもその姿は広く描かれている。

弱点と対処の記録は、この片付け以外には見当たらない。好物や禁忌も記されない。狩野乗信『百鬼夜行之図』など江戸時代以後の百鬼夜行図には提灯が描かれる作例があるが、退治の法は伴わない。

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伝承・逸話

化物寺(提灯正体):山形県では、古びた提灯のある神社に提灯お化けが現れ、人を脅かすという昔話がある。人々が提灯を片付けると、お化けは現れなくなったと伝える。脅かすものが提灯であり、それを除けば怪異は止む、という順である。この筋は、正体が提灯であった「化物寺」の類例とされる。地域に即した具体的な伝承はほとんど残されていないともされ、筋を追える口承の例は少ない。

獣の化身:狐や狸が人間を驚かすために提灯へ化ける、という表現は各地に見られる。器物が自ら歩む話ではなく、獣が提灯に化けて人を驚かす、という筋である。誰が遇ったか、どの社寺で起きたかまでは、土地を名指す記録としては残されていない。

提灯火:提灯と称される怪異は、提灯火のように器物主体ではなく怪火として伝わることも多い。提灯を片付けることで収まる化物寺型とは異なり、怪火として語られる筋である。

提灯抜け:歌舞伎『東海道四谷怪談』(1825年)では、伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から姿を現す。この演出は提灯抜けと呼ばれる。殺された女の霊が、提灯の内側から抜け出て現れる、という順である。1813年、中村座の『累渕扨其後』では、提灯に顔を現す演出がある。

提灯お岩:江戸時代後期、葛飾北斎は『百物語』に「お岩さん」を描き、歌川国芳は『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』を描いた。これらは『東海道四谷怪談』の提灯抜けや、『累渕扨其後』の提灯に顔を現す演出から発想された図であり、提灯お岩と呼ばれる。お岩の霊が提灯から、あるいは提灯に、姿を現すところを画題とする。

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起源と解釈

定説:絵画上の成立

器物の妖怪を多数描く『百鬼夜行絵巻』のうち、江戸時代以前と見られる古い作品に提灯は確認されていない。提灯が描かれた作例は、江戸時代以後の狩野乗信『百鬼夜行之図』などに現れる。有名である反面、地域に即した具体的な伝承はほとんど残されていないともされ、伝承上で提灯と称されるものは、狐や狸が人を驚かすために化ける表現として各地に見られ、提灯火のように器物主体ではなく怪火として伝わることも多い。妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類されている。

別系統:提灯お岩

葛飾北斎『百物語』の「お岩さん」と歌川国芳『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』は、鶴屋南北『東海道四谷怪談』(1825年)で伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から現れる「提灯抜け」、および『累渕扨其後』(1813年、中村座)で提灯に顔を現す演出から発想された図である。提灯お岩と呼ばれ、歌舞伎の怨霊演出に発想を得た図として扱われる。

少数説:子供向け創作

子供向けに創作された妖怪とする説もある。江戸時代以後の『お化けかるた』などには、その姿が広く描かれている。水木しげるの著書には、人を驚かしてその魂を吸い取る話が載るが、出典となる一次資料の名は挙げられていない。

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史料の変遷

草双紙とかるた:江戸時代以後、草双紙やおもちゃ絵、かるたに広く描かれた。かるたでは『お化けかるた』などの作例がある。絵画の記録では、鳥山石燕『百器徒然袋』に提灯のかたちの妖怪がある。

歌舞伎と浮世絵:1813年、中村座の『累渕扨其後』では提灯に顔を現す演出があった。1825年の歌舞伎『東海道四谷怪談』では、伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から姿を現す「提灯抜け」が用いられた。葛飾北斎『百物語』の「お岩さん」と歌川国芳『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』はこれらを発想として描かれ、提灯お岩と呼ばれる。

明治以後:明治・大正時代以後も、玩具や子供向けの妖怪関連の書籍、お化け屋敷の演出に見られる。『お化けかるた』など江戸時代以後のかるたに描かれた図が、子供向けの記録として先行する。地域などに即した具体的な口頭伝承はほとんど残されていないともされ、妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類されている。子供向けに創作された妖怪とする説もある。水木しげるの著書には提灯お化けの話が掲載されるが、出典となる一次資料の名は挙げられていない。

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ゆかりの地

山形県: 妖怪関連の書籍によっては「絵画上でのみ存在する妖怪」として分類され、地域に即した具体的な伝承はほとんど残されていないとも言われる。所在として名が残るのは山形県で、古びた提灯のある神社を舞台とする昔話が伝えられるが、神社の固有名は記されず、碑や祭りの所在もない。訪ね得るのは県域にとどまる。鳥山石燕『百器徒然袋』の不落不落(ぶらぶら)にも、国・郡・村の名は無い。

中村座: 『累渕扨其後』(1813年、中村座など)は提灯に顔を現す演出の場として名が残る。芝居の小屋であり、所在の都市名は記されない。提灯お化けを祀る社寺や碑として訪ねる対象ではない。

出典: 〔1〕〔5〕

現代の受容

玩具・児童書・お化け屋敷:明治・大正時代以後、玩具や子供向けの妖怪関連の書籍、お化け屋敷の演出などに提灯お化けの姿が見られる。子供向けに創作された妖怪とする説もある。遊戯の図としては、江戸時代以後のかるた『お化けかるた』などにすでに描かれている。

水木しげるの話型:妖怪漫画家・水木しげるの著書には、人を驚かしてその魂を吸い取る「提灯お化け」の話が掲載されている。出典となる一次資料の名は挙げられていない。漫画・アニメ・ゲーム・広告の固有の作品名と年は、依拠できる文献には示されていない。魂を取るというキャラクターの話型と、鳥山石燕『百器徒然袋』が不落不落(ぶらぶら)の名で提灯のかたちを描いた絵画上の像とは、層を異にする。

出典: 〔1〕〔8〕

出典・参考文献References

  1. 『百器徒然袋』 鳥山石燕 1784
    中巻「不々落々」。提灯のかたちの妖怪を描く。
  2. 『百物語』 葛飾北斎
    「お岩さん」。提灯から現れるお岩を描き、提灯お岩と呼ばれる。
  3. 『神谷伊右エ門 於岩のばうこん』 歌川国芳
    提灯お岩を描いた浮世絵。歌舞伎の提灯抜けなどに発想した図。
  4. 『東海道四谷怪談』 鶴屋南北 1825
    伊右衛門に殺されたお岩の霊が提灯から姿を現す演出(提灯抜け)。
  5. 『累渕扨其後』 1813
    1813年中村座。提灯に顔を現す演出があり、提灯お岩の図像の発想源の一つ。
  6. 『百鬼夜行絵巻』
    器物の妖怪を多数描くが、江戸時代以前の作例に提灯は確認されていない。
  7. 『百鬼夜行之図』 狩野乗信
    江戸時代以後の百鬼夜行図。提灯が描かれた作例として挙げられる。
  8. 『お化けかるた』
    江戸時代以後のかるたに提灯お化けの姿が広く描かれる。

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  • 山形県古びた提灯のある神社に提灯お化けが現れ、提灯を片付けると現れなくなったという昔話の例がある。

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よくある質問FAQ

提灯お化けは実在するのか?

提灯お化けは江戸時代の妖怪画や草双紙に描かれた伝説上の存在で、実在はしない。付喪神の一種として語られる。

提灯お化けの弱点は?

文献に明確な弱点の記述はない。

提灯お化けとは何ですか?

提灯の妖怪で、化け提灯、お化け提灯、提灯小僧などとも呼ばれる。古い提灯が上下に割れ、割れ目が口となって長い舌を出し、上半分に一つ目または二つの目がある姿が一般的である。江戸以後の草双紙やおもちゃ絵に描かれた。

提灯お化けの伝承はあるか?

土地に即した口承はほとんど残らず、絵画上の妖怪と分類する書籍もある。子供向けの創作とする説もある。山形県に、神社の古びた提灯を片付けると現れなくなったという化物寺型の昔話がある。

不落不落と提灯お化けは同じか?

鳥山石燕は『百器徒然袋』中巻に不々落々(ぶらぶら)の名で提灯のかたちの妖怪を描いている。後世に提灯お化けとして知られる図像の、江戸期の画題の一つである。名称は一致しない。

提灯お化けと提灯お岩の違いは?

提灯お岩は、歌舞伎『東海道四谷怪談』(1825年)の提灯抜けや、『累渕扨其後』(1813年、中村座)の提灯に顔を現す演出から描かれたお岩の霊である。葛飾北斎『百物語』の「お岩さん」などがこれに当たる。器物が化けた提灯お化けとは別の図像である。

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最終更新: · 編集: 百鬼編集室