二口女
二口女(ふたくちおんな)は、後頭部にもう一つの口を持ち、髪が蛇のように動いて食事を運ぶとされる日本の妖怪。江戸期の怪談集や随筆に記録がある。

- 分類
- 妖怪(女怪)
- 分布
- 東北地方・関東地方を中心とするが、全国的に語られる
- 特徴
- 後頭部の第二の口、蛇のように動く髪、異常な食欲
- 起源
- 継子いじめや飢餓が原因で妖怪化したとする話型
解説Overview
二口女(ふたくちおんな)は、人間の女性の後頭部にもう一つの口が現れ、その口が食物を要求するとされる日本の妖怪である。江戸時代の随筆や怪談集に、継母と継子をめぐる話として記録が残る。
代表的な話型では、継母が継子に食事を与えず、自分だけ食べていたところ、後頭部が裂けてもう一つの口になったという。この口は異常な食欲を持ち、髪の毛が蛇のように動いて食物を口へ運ぶと描かれる。髪が自在に動く点は、日本の妖怪画や怪談文芸で繰り返し強調される特徴である。
文献上の初出としてしばしば挙げられるのは、江戸時代中期の随筆『諸国里人談』(しょこくりじんだん、1736年刊)である。同書には、ある女の後頭部に口が生じ、食物を食べる話が収められている。また、江戸時代後期の怪談集『絵本百物語』(1841年刊、桃山人作、竹原春泉斎画)にも「二口女」の項目があり、髪が動いて口に食物を運ぶ様子が記される。
地域差としては、東北地方や関東地方を中心に伝承が分布するとされるが、特定の一地域に限定された話ではなく、飢餓や継子いじめという普遍的な主題を背景に各地で語られた。名称も「二口女」のほか、単に「二つの口の女」などと呼称されることがある。
二口女の特徴は、人間の女性が妖怪化する点にある。鬼や天狗のように最初から異形として生まれるのではなく、家庭内の虐待や飢餓という社会的な原因によって、身体が変容する。この構造は、江戸時代の怪談が娯楽であると同時に、当時の家族関係や食糧事情を映す鏡でもあったことを示している。
現代では、二口女は都市伝説やホラー作品、漫画、アニメのキャラクターとして再解釈されることが多い。特に、後頭部の口という視覚的に強いモチーフは、イラストや映像で繰り返し用いられてきた。ただし、現代の創作物における二口女の設定は、必ずしも江戸期の記録に忠実ではない。
二口女は、日本の妖怪の中でも「女性の身体の変容」と「食」を結びつけた点で特異な存在である。その伝承は、飢えと不平等という現実の問題を、怪異の形で語り直したものと位置づけられる。
伝承・史料Lore
諸国里人談: 1736年刊の随筆。ある女の後頭部に口が生じ、食物を食べる話が収められている。二口女の初出としてしばしば参照される。
絵本百物語: 1841年刊、桃山人作、竹原春泉斎画。二口女の項目があり、髪が動いて口に食物を運ぶ様子が記される。
継子いじめの話型: 継母が継子に食事を与えず、自分だけ食べていたところ、後頭部にもう一つの口ができたとする話が広く伝わる。飢餓と家庭内の不平等が背景にある。
現代の再解釈: ホラー漫画やアニメ、ゲームなどで、後頭部の口を持つ女性として描かれることが多い。ただし設定は江戸期の記録とは異なることがある。
出典・参考文献References
- 『諸国里人談』 1736 — 二口女の初出とされる随筆。後頭部に口が生じた女の話を収める。
- 『絵本百物語』 桃山人 — 古典・基本文献(成書年は版により異なる)
- 『日本妖怪大事典』 村上健司(角川書店) 2005 — 「二口女」の項
- 『怪異・妖怪伝承データベース』 国際日本文化研究センター — 該当項目の各地事例(2026-09-19)
特集Collections
よくある質問FAQ
二口女は実在しますか?
実在する妖怪ではなく、江戸時代の怪談集や随筆に記録された伝承上の存在です。飢餓や継子いじめを背景とした話型として語られました。
二口女の初出は何ですか?
1736年刊の『諸国里人談』が初出としてしばしば挙げられます。また1841年刊の『絵本百物語』にも二口女の項目があります。
二口女とろくろ首の違いは?
ろくろ首は首が伸びる妖怪で、二口女は後頭部にもう一つの口ができる妖怪です。どちらも女性の身体の変容を主題にしますが、変わる部位が異なります。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室