釣瓶落とし
釣瓶落としとは、京都の比叡山周辺で夕暮れに井戸の釣瓶を落とす音を立て、木の上から人を襲うとされる妖怪。

- 分類
- 妖怪
- 分布
- 京都府・滋賀県を中心とする近畿地方
- 姿
- 猿のような姿、または木の上から落ちてくる妖怪
- 性質
- 夕暮れに井戸の釣瓶を落とす音を立て、人を襲う
解説Overview
釣瓶落としは、井戸の釣瓶(つるべ)を落とすような音をさせて現れる妖怪である。『画図百鬼夜行』には、木の上から人を襲う姿が描かれている。釣瓶とは、井戸から水を汲み上げるために用いた桶のことだ。夕暮れ時、井戸端で水を汲んでいる者に、突然「ガラガラ」という音が聞こえる。見上げると、釣瓶が落ちてくる。だがそれは桶ではなく、妖怪の仕業であるという。
この妖怪の最も古い記録の一つは、江戸時代の怪談集『諸国百物語』(1677年)である。そこには、京都の比叡山の麓で、夕暮れに釣瓶を落とす音がすると、必ず人が死ぬという記述がある。また、『画図百鬼夜行』では、木の上から女を襲う妖怪として描かれ、その姿は猿のようにも見える。地域によっては、釣瓶落としは「釣瓶火」とも呼ばれ、火の玉となって井戸から現れるとも言われる。
釣瓶落としの正体については、諸説ある。一説には、井戸に落ちた者の怨念が妖怪化したものとされる。また、単に井戸の釣瓶が自然に落ちる音を妖怪の仕業と解釈したものだともいう。民俗学者の柳田國男は『妖怪談義』(1956年)で、釣瓶落としを「音の妖怪」として分類し、その正体は不明であるとしながらも、井戸という日常生活の場に潜む恐怖を象徴するものだと述べている。
釣瓶落としの伝承は、近畿地方を中心に分布する。特に京都の比叡山周辺や、滋賀県の山間部でよく語られる。井戸は生活に欠かせないものであり、そこにまつわる怪異は多い。釣瓶落としもその一つである。現代では、都市伝説として語り継がれることは少ないが、古典妖怪としての認知度は高い。
釣瓶落としの特徴は、その音にある。実際に釣瓶が落ちる音と、妖怪が立てる音は似ているため、区別がつかない。そのため、夕暮れに井戸の近くで音を聞いた者は、妖怪の仕業ではないかと恐れた。また、釣瓶落としは人を襲うだけでなく、時には人を井戸の中に引きずり込むとも言われる。
釣瓶落としは、江戸時代の妖怪画や怪談集にしばしば登場する。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、木の上から逆さまに落ちてくる妖怪として描かれ、その姿は異形である。また、『諸国百物語』では、釣瓶落としに遭遇した者の体験談が記されている。
現代において、釣瓶落としはアニメやゲームなどの創作にも登場する。しかし、その本来の姿は、井戸という身近な場所に潜む恐怖を表したものである。夕暮れ時、井戸の釣瓶が落ちる音を聞いたら、それは釣瓶落としの仕業かもしれない。
伝承・史料Lore
『諸国百物語』の記録: 1677年の怪談集『諸国百物語』には、比叡山の麓で夕暮れに釣瓶落としの音を聞くと人が死ぬという話が収められている。
『画図百鬼夜行』の図像: 鳥山石燕は釣瓶落としを、木の上から逆さまに落ちてくる妖怪として描いた。その姿は猿のようにも見え、井戸の釣瓶を思わせる。
柳田國男の分類: 柳田國男は『妖怪談義』で釣瓶落としを「音の妖怪」とし、正体不明ながらも日常の音に宿る恐怖を指摘した。
出典・参考文献References
- 『諸国百物語』 1677 — 巻一「比叡山の釣瓶落とし」
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776 — 釣瓶落としの図
- 『妖怪談義』 柳田國男(修道社) 1956 — 「音の妖怪」の項
- 『怪異・妖怪伝承データベース』 国際日本文化研究センター — 該当項目の各地事例(2026-09-19)
特集Collections
よくある質問FAQ
釣瓶落としはどこに現れる?
京都の比叡山周辺や滋賀県の山間部など、近畿地方の井戸のある場所に現れるとされる。
釣瓶落としの正体は?
正体は不明だが、井戸に落ちた者の怨念や、釣瓶が自然に落ちる音を妖怪と見なしたものなど、諸説ある。
釣瓶落としは人を食べる?
人を襲うとされるが、食べるという記述はない。井戸に引きずり込むとも言われる。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室