木霊

こだまkodama

木霊(こだま)は、山や森で声が反響する現象を、木の精霊の仕業とする日本の民間信仰。

イメージ画(当サイト制作)
分類
山の怪
分布
伊豆諸島・沖縄島
出没
山中の樹木
弱点・対処
伐採前に祀る
主な初期記録
『和名類聚抄』(934)

4 出典 · 4,062 字 · 最終更新

解説Overview

木霊(こだま)は、樹木に宿る精霊であり、宿った樹木自体も木霊と呼ぶ。山や谷の反響である山彦は、この精霊の仕業ともされ、木霊とも呼ばれる。表記は木魂・谺。古くは『古事記』の木の神ククノチノカミが木霊と解釈される。平安時代の『和名類聚抄』は木の神の和名を「古多万(コダマ)」とし、『源氏物語』には「鬼か神か狐か木魂か」とある。

外見はごく普通の樹木で、山中を自在に駆けるともいう。切り倒せば祟られ、古木を切ると血が出るという。怪火・獣・人の姿をとる話もある。鳥山石燕『画図百鬼夜行』は「木魅」と題し、木のそばに老いた男女を描き、百年を経た木に神霊がこもるとした。青ヶ島ではスギの大木の根にキダマサマを祀り、八丈島三根村と沖縄島でも伐採前に木の霊へ祭や祈願を捧げる。

名称と語源

「木霊」は「こだま」と読み、漢字では木霊のほか、木に宿る魂を示す木魂、山や谷の反響を意味する谺とも記す。音が反射して遅れて聞こえる現象を山彦(やまびこ)といい、樹木に宿る精霊のしわざとする立場から、山彦も木霊と呼ばれる。

平安時代の辞書『和名類聚抄』は、木の神の和名として「古多万(コダマ)」を掲げる。『古事記』に見える木の神ククノチノカミは、後世にこの木霊と解釈されてきた。

『源氏物語』は「鬼か神か狐か木魂か」「木魂の鬼や」と記し、木魂を鬼・神・狐と並置する。ここには、木の神の和名であった語を、すでに妖怪に近いものとして扱う用法がある。鳥山石燕『画図百鬼夜行』は標題を「木魅(こだま)」とし、魅の字で項を立てた。

異名は、樹霊に敬称を添える系統と、沖縄の木の精の系統とに分かれる。伊豆諸島の青ヶ島ではキダマサマ・コダマサマ、八丈島の三根村ではキダマサマという。沖縄島では木の精をキーヌシーといい、キジムナーはその一種、あるいはキーヌシーを擬人化した呼び名とされる。

出典: 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕

姿かたち

木霊の外見はごく普通の樹木であるとされる。宿る木には決まった種類があるともいい、古木を切ると木から血が出るという説もある。村上健司『日本妖怪大事典』は木霊の図像と伝承を整理する。

怪火、獣、人の姿になるともいい、人間に恋をした木霊が人の姿をとって会いに行ったという話もある。国際日本文化研究センターの『怪異・妖怪伝承データベース』は樹霊に関する伝承事例を収録する。

鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』は「木魅(こだま)」と題し、木々のそばに老いた男女が立つ姿で描く。百年を経た木には神霊がこもり、姿形を現すとされている。石燕の図に残る姿はこの老いた男女であり、民間の語りでは樹木そのものか、怪火・獣・人への変化が主となる。一つの定型がいつ固まったかは、ここに挙げた文献には見えない。

伊豆諸島の青ヶ島では山中のスギの大木が木霊の宿る木とされる。沖縄島では、妖怪として知られるキジムナーをキーヌシーの一種とも、キーヌシーを擬人化したものともいう。

出典: 〔4〕

性質と弱点

木霊が宿る木を切り倒そうとすると祟られるとされ、神通力に似た不思議な力を有するともいう。宿る木はその土地の古老が代々語り継ぎ、守るものとされ、人との関わりは守護と伐採の祟りとして語られる。村上健司『日本妖怪大事典』は「木霊」項で伝承を整理する。

精霊は山中を敏捷に、自在に駆け回るとされる。伊豆諸島の青ヶ島では、山中のスギの大木の根元に祠を設けて「キダマサマ」「コダマサマ」と呼んで祀っており、樹霊信仰の名残と見られている。八丈島の三根村では、木を刈る際に必ず木の霊であるキダマサマに祭を捧げる風習があった。人の側の対処は、祠を設け、伐採の前に祭を捧げることとされる。国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは「木霊」「こだま」見出しで樹霊の伝承事例を収録する。

沖縄島では木の精を「キーヌシー」といい、木を伐るときにはキーヌシーに祈願してから伐るという。夜中に倒木などないのに倒木のような音が響くことがあり、これをキーヌシーの苦しむ声だといい、そのようなときには数日後にその木が枯死すると伝える。

伝承・逸話

人に逢いにゆく木霊: 木霊は怪火、獣、人の姿になるともいう。人間に恋をした木霊が人の姿をとって会いに行ったという話が伝えられる。恋をしたのち、人の姿を選び、その姿で会いに行く、という筋である。村上健司『日本妖怪大事典』は「木霊」項で呼称と伝承を整理している。

百年の木に現れる神霊: 鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』では「木魅(こだま)」と題し、木々のそばに老いた男女が立つ姿が描かれている。百年を経た木には神霊がこもり、姿形を現すとされており、古木の霊が男女の姿で立ち現れる筋がこの図に残る。

青ヶ島のキダマサマ: 伊豆諸島の青ヶ島では、山中のスギの大木の根元に祠を設けて「キダマサマ」「コダマサマ」と呼んで祀っている。山中の特定のスギに霊を認め、根元へ祠を置き、呼称を定めて祀る話型であり、樹霊信仰の名残と見られている。国際日本文化研究センターの『怪異・妖怪伝承データベース』は「木霊」「こだま」見出しで樹霊の事例を収録する。

三根村のキダマサマの祭: 八丈島の三根村では、木を刈る際には必ず、木の霊であるキダマサマに祭を捧げる風習があった。木を刈る手順のなかにキダマサマへの祭が組み込まれていたと伝えられる。『怪異・妖怪伝承データベース』は「木霊」「こだま」見出しで樹霊に関する伝承事例を収録する。

キーヌシーの苦しむ声: 沖縄島では木の精を「キーヌシー」といい、木を伐るときにはキーヌシーに祈願してから伐るという。夜中に倒木などないのに倒木のような音が響くことがあり、これはキーヌシーの苦しむ声だといい、このようなときには数日後にその木が枯死するという。音が先に響き、そのあと枯死する、という順で語られる。沖縄の妖怪として知られるキジムナーは、このキーヌシーの一種とも、キーヌシーを擬人化したものがキジムナーだともいう。村上健司『日本妖怪大事典』は木霊の項で呼称と伝承を整理する。

出典: 〔4〕

起源と解釈

山神・樹木神説: 木霊を山神信仰に通じるものとする見方がある。古くは『古事記』(太安万侶)に記された木の神ククノチノカミを、後世に木霊と解釈する読みが、この見方の根拠とされる。源順の平安時代の辞書『和名類聚抄』は、木の神の和名として「古多万(コダマ)」を掲げ、木霊を木の神の名として位置づけていた。

神から怪への読み替え: 『源氏物語』(紫式部)に「鬼か神か狐か木魂か」「木魂の鬼や」とあり、平安期にはすでに妖怪に近いものと見なす考えがあったと見られている。木の神とする辞書の分類と、物語における怪寄りの用法とが、同じ時代に並存していた。鳥山石燕は『画図百鬼夜行』で「木魅(こだま)」を立て、百年を経た木には神霊がこもり姿形を現すとした。

比較: これらの樹木崇拝は北欧諸国をはじめ他の国々にも多くみられる。彭侯やドリュアスが関連として挙げられるが、渡来や借用は述べられていない。村上健司『日本妖怪大事典』は呼称・図像・伝承を整理する。定説に近いのは山神・樹木神との連続であり、彭侯やドリュアスは類例の提示にとどまる。

出典: 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕

史料の変遷

源順『和名類聚抄』(934)は、木の神の和名として「古多万(コダマ)」と記す。平安時代の辞書に残るこの項が、「こだま」を和名で示した早い記録であり、のちの物語や画集に先立つ辞書上の表記である。

紫式部『源氏物語』には「鬼か神か狐か木魂(こだま)か」「木魂の鬼や」の句があり、物語本文では「木魂」と書いて鬼・神・狐と並列する。辞書の「古多万」から物語の「木魂」へ、記録上の漢字が移っている。

鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776)は「木魅(こだま)」と題して一図を収めた。和名辞書と物語の用例に続き、近世の妖怪画集では「木魅」の画題として項目が立ち、木霊が画集の体裁で記録される。

村上健司『日本妖怪大事典』(2005)は「木霊」の項を立て、呼称・図像・伝承を一項にまとめる。国際日本文化研究センターの『怪異・妖怪伝承データベース』は「木霊」「こだま」の見出しで樹霊および山彦に関する伝承事例を収録し、呼称と事例の分布を検索できる。

出典: 〔2〕〔3〕〔4〕

ゆかりの地

青ヶ島(伊豆諸島): 伊豆諸島の青ヶ島では、山中のスギの大木の根元に祠を設け、「キダマサマ」「コダマサマ」と呼んで祀ると伝える。訪ね得るのはその祠とスギである。村上健司『日本妖怪大事典』(2005)は「木霊」項で呼称と伝承を整理する。

三根村(八丈島): 八丈島の三根村では、木を刈る際に木の霊であるキダマサマへ祭を捧げる風習があったとされる。固有の社殿名は伝わらず、訪ね得るのは三根村の村域である。

沖縄島: 沖縄島では木の精をキーヌシーといい、木を伐るときにはキーヌシーに祈願してから伐ると伝える。キジムナーはキーヌシーの一種、あるいはキーヌシーを擬人化したものとする見方がある。固有の社寺名は伝わらず、訪ね得るのは島域である。国際日本文化研究センター『怪異・妖怪伝承データベース』は「木霊」「こだま」見出しで樹霊の伝承事例を収録する。

現代の受容

事典とデータベース:村上健司『日本妖怪大事典』は「木霊」項で呼称・図像・伝承を整理する。国際日本文化研究センターの『怪異・妖怪伝承データベース』は「木霊」「こだま」見出しで樹霊・山彦に関する伝承事例を収録する。現代の参照先として項を立てているのは、この種の事典と事例データベースである。

キャラクター化した像との差:事典が図像として整理する層には、鳥山石燕『画図百鬼夜行』の「木魅」が含まれる。石燕は木々のそばに老いた男女が立つ姿を描き、百年を経た木に神霊がこもり姿を現すとした。データベースが収録するのは樹霊と山彦の事例であり、特定の小説・漫画・アニメ・遊戯の登場人物として作品名と年を添えて描く記述はこれらの出典にない。作品世界で姿と役柄を固定したキャラクターと、呼称・図像・伝承を束ねる事典の項とは、別の層として立つ。

出典: 〔4〕

出典・参考文献References

  1. 『古事記』 太安万侶 712
    木の神ククノチノカミを記す。後世に木霊と解釈される。
  2. 『和名類聚抄』 源順 934
    木の神の和名として「古多万(コダマ)」と記す。
  3. 『源氏物語』 紫式部
    「鬼か神か狐か木魂か」「木魂の鬼や」と記し、木魂を妖怪に近いものと見なす用例。
  4. 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776
    「木魅(こだま)」と題し、木々のそばに老いた男女が立つ姿を描く。百年を経た木に神霊がこもり姿を現すとする。

ランキング順位Rankings

ゆかりの地Places

  • 青ヶ島(東京都)山中のスギの大木の根元に祠を設け、キダマサマ・コダマサマとして祀る。
  • 三根村(八丈島・東京都)木を刈る際に、木の霊であるキダマサマへ祭を捧げる風習があった。
  • 沖縄島(沖縄県)木の精キーヌシーを伐採前に祈願し、夜の倒木のような音をその苦しむ声とする。

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よくある質問FAQ

木霊とは何ですか?

木霊(こだま)は、山や森で声が反響する現象を木の精霊の仕業とする日本の民間信仰です。

木霊と山彦の違いは?

山彦は木霊とほぼ同義で使われますが、山の神そのものを指す場合もあります。

木霊の姿はどう描かれる?

外見はごく普通の樹木とされる。鳥山石燕『画図百鬼夜行』は「木魅」と題し、木々のそばに老いた男女が立つ姿で描き、百年を経た木に神霊がこもるとした。怪火や獣、人の姿になるともいう。

木霊の木を切るとどうなる?

切り倒そうとすると祟られるとされる。古木を切ると木から血が出るという説もある。八丈島三根村では刈る前にキダマサマへ祭を捧げ、沖縄島ではキーヌシーに祈願してから伐る。

木霊の名はいつから見える?

『和名類聚抄』に木の神の和名として「古多万(コダマ)」とある。『源氏物語』には「鬼か神か狐か木魂か」とあり、当時すでに妖怪に近いものと見なす考えがあったとされる。

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最終更新: · 編集: 百鬼編集室