塗壁
塗壁は、夜道を塞ぐ壁のような妖怪で、福岡県や大分県の伝承に名が見える。

- 分類
- 妖怪
- 分布
- 九州地方(福岡県、大分県など)
解説Overview
塗壁(ぬりかべ)は、夜道の前方に突如として現れる、壁のような妖怪である。その名は「塗り壁」、すなわち漆喰を塗った壁に由来し、越えようとしても越えられず、回り込もうとしてもどこまでも続く壁となって行く手を阻むとされる。
江戸時代の妖怪画集である鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には、塗壁の姿が描かれている。石燕は塗壁を、目や口のない、ただの壁のような姿で描いた。この図は、後世の妖怪イメージの基盤となった。また、江戸時代の怪談集である『諸国百物語』には、肥前国(現在の佐賀県)で夜道に壁が現れたという話が収められている。
塗壁の伝承は、主に九州地方に分布する。福岡県の『妖怪談義』(柳田國男)には、福岡県の筑後地方で、夜道を歩いていると突然目の前に壁が現れ、先に進めなくなったという話が記されている。また、大分県の『大分県妖怪伝承』には、大分県の山間部で、塗壁に遭遇したという伝承が残る。
塗壁の特徴は、その姿が一定しないことである。ある話では、文字通り白い漆喰の壁のような姿をしているとされ、またある話では、黒い塊のようなものとして現れるという。いずれにせよ、塗壁は人間に危害を加えることはなく、ただ道を塞ぐだけの存在である。
塗壁の正体については、様々な説がある。一説には、狸や狐が化けたものとされ、また一説には、古い壁に宿った霊であるとも言われる。しかし、その正体ははっきりとしていない。
現代では、塗壁は水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場したことで広く知られるようになった。同作では、塗壁は目と口のある、のっぺりとした壁のような妖怪として描かれ、主人公の鬼太郎と敵対することもある。また、ゲーム『妖怪ウォッチ』にも塗壁をモチーフにした妖怪が登場する。
塗壁は、その単純な姿ゆえに、現代の創作においても多様に解釈されている。しかし、その本質は、夜道を塞ぐという、人間の不安を象徴する存在であると言える。
なお、塗壁は「ぬりかべ」とひらがなで表記されることも多く、また「塗り壁」と漢字で書かれることもある。地域によっては「ぬりかべ」ではなく「ぬりかべい」と呼ぶこともあるという。
伝承・史料Lore
鳥山石燕『画図百鬼夜行』: 塗壁を目や口のない壁として描く。 『諸国百物語』: 肥前国で夜道に壁が現れた話。 柳田國男『妖怪談義』: 筑後地方で夜道を塞ぐ壁の伝承を記録。
出典・参考文献References
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 1776 — 塗壁の図版
- 『諸国百物語』 1677 — 肥前国の壁の話
- 『妖怪談義』 柳田國男 1929 — 筑後地方の伝承
よくある質問FAQ
塗壁は人を食べますか?
いいえ、塗壁は人を襲うことはなく、ただ道を塞ぐだけの妖怪とされています。
最終更新: · 編集: 百鬼編集室